パケットトリックファンの皆様、お待たせいたしました。
monthly Magic Lessonが贈る「オリジナルパケットシリーズ」の最新作です。
今回は、ゆうきとも氏の肝いりで、注目の若手研究家、今西章氏をフィーチャー。
完成度の高い実践的な作品です。ぜひ、ご愛用ください。
4枚のカードを使います。
3枚のジョーカーの中に、1枚だけエースが表向きで入っています(スペードのエースとします)。
「1枚だけ違うカードが入っていて、それがどこにあるかを追ってもらうゲームです」
エースを裏向きにしてみると、それだけ裏の色が違っています。
ジョーカー3枚は青裏ですが、スペードのエースだけが赤裏なのです。
「わかりやすいように、当たりカードだけ色を変えてありますから、簡単ですね」
■第1段
当たりカードが上から3枚目にある状態で、パケットを揃えます。
観客に当たりカードの位置を尋ねますが、広げてみると、当たりカードは2枚目に移動しています。
もう一度、上から3枚目になるように移し変えますが、またしても2枚目に移動します。
「意外と難しいですよね。ちょっと1枚減らしてみましょう」
当たりではないジョーカーのうちの1枚を、胸ポケットにしまいます。
「3枚に減らしましたから、少しやさしくなりましたね」
残る3枚で当たりカードを確認した上で、揃えて、観客にどこにあるかを確認しますが…
広げてみると、なんと3枚ともハズレ、当たりカードは消えてしまっています。
なんと、色違いの当たりカードは、胸ポケットから現れます。
■第2段
「もうちょっと続けて、今度は違うことをやってみましょう」
色違いの当たりカード(エース)を、堂々とポケットにしまいます。
残る3枚の青裏カードがジョーカーであることを確認した後、マジシャンは、
ポケットにしまった当たりカードをパケットに戻すジェスチャー(おまじない)をします。
広げてみると、3枚の青裏の中に、1枚の赤裏カードが飛び込んできています。
そのカードを表向きにすると、意外にも、それはエースではなく、ジョーカー。
残り3枚の青裏カードを見ると、なんと、こちらが3枚ともスペードのエースになっているではありませんか!
最後は、カードの表面の構成が逆転する、予想外のビッグクライマックス。
そして、このトリックの最大の特長として、そのまま、観客にカードを手渡して調べてもらうことができます。
怪しいところは、どこにもありません…
事実、4枚とも完全にレギュラーカードで、本当にどこにも仕掛けはありません。
エンドクリーンです。
━…━…━…━…━…━…━…━…
「パケットトリックを最後に手渡せるようにしたい」という着想自体は、もちろん古くからあるものであり、
そのような作例もそれなりに多くあることはありますが、それでも、パケットトリックの中では貴重な部類です。
多段階現象のしっかりとした本格的な手順、すなわち、パケットトリックの現象や構造・原理面での魅力と利点を最大限に活かすような手順は、やはりトリックカード/エキストラカードに基づく「面構成」に頼ることが多いため、根本的に「手渡し」とは相容れないことが多いのです。
近年、日本でも人気の高いジョン・バノン氏が、この「渡せるパケット」を精力的に研究し発表されています。
くしくも、そのバノン氏が開発した技法の1つに、「ブレッド・パーティ・カウント/ディスプレイ」があります。
本作も、そのテクニックを冒頭で利用して、ディレイドクライマックスの「基盤」となる状況を作り出しています。
この「ブレッド・パーティ・カウント/ディスプレイ」ですが、大変興味深い点として、技術的にはエルムズレイカウントの動作を行っているだけなので、入門者の方でも比較的すぐに行えることが挙げられます。
通常のエルムズレイカウントは「上面」だけを見せるものですが、それに、手を返しながら「下面」を見せる操作を加え、フラッシュトレーションムーブの原理を一部に組み込むことで、実にユニークな「技法」を構成しています。
リバースカードないしオッドカードをミスディレクションとして巧妙に活用し、大胆ながら、圧倒的に「効率のよい」ディスプレイ状況を実現しています。
ご存知でない方は、本作の解説を元に、ぜひご研究くださいませ。
━…━…━…━…━…━…━…━…
特筆すべきは、今回の作品はレギュラーカードのみで成り立っています。
もちろん特殊な組み合わせを必要としますので、当然、パケット用具(必要なカード一式)もセットでお届けいたします。
すぐに練習し、実演できます。
用具プラス解説DVD、それに解説冊子も添付されています。
今回は、カードの組み合わせをある程度特定して制作いたしましたので、解説を「読み替え」たりする必要もなく、映像・冊子とも直感的に理解しやすい形になっています。
いつもながらの詳しい解説で、解説の「聞き手」役にはゆうきとも氏に加わっていただいて、手順開発の経緯や、演技のポイント、工夫した点など、周辺情報まで含めて解説しておりますので、
参考にしていただけるものと思います。
━…━…━…━…━…━…━…━…
現象面での特徴として、2段構成ですが、1段目のみでも十分に「強い」クライマックスを持っています。
パケットトリックでは、一連の手順というと、最後のクライマックスに向けての「足がかり」的な感じで途中の現象は軽めであることも多いのですが、これは各段、ともに強いエフェクトです。
ですので、演技的にもそれを踏まえて、流さずにきっちり演じることで、観客には
マジックを「2つ分」見た、という満足度を与えられるものとなっています。
通常とは意味合いが違いますが、ある種「ダブルクライマックス」を持つ手順といってよいでしょう。
第1段では交換をベースにした移動現象、第2段では、実体そのものが移動する物理的な移動現象、とこれもちょっとニュアンスが異なる点が、統一感の中にも変化をもたらしていて、効果を上げています。
方法論的にも、それが最終形(クリーンナップ)への布石となっているわけで、巧妙です。
最終的な逆転現象を含め、伝統的な「フォーカードモンテ」、特に「サイドウォークシャッフル」などの流れを汲んでいる部分もあります。
(ちなみにレギュラーカードで演じている点で、ディバイディッド的な扱いがないため、その手の操作がわずらわしく感じられている方にも演じやすく気に入っていただけるかと思います)
ただし、そもそも、ターゲットカードが「表」も「裏」も他と異なる点で、やや異色です。
どちらの面から見ても一目瞭然、すぐに分かる構成ですから、通常のモンテは成立しづらいわけです。
この、ある意味「やさしすぎる」状況で、果たして何を見せてくれるのか、というのが1つのポイント。
十分に期待に応えるエフェクトに仕上がっています。
最後の逆転にしても、単なる「構成の逆転」ではなく1枚のオッドカードの「裏面」が固定されているためより困難な現象が起こっていることになります。
観客からすると、要は「すべてのカードが変化してしまった」ことになるわけで、大変強烈です。
しかもこれで「手渡し可能」というのは、通常なら、ちょっとありえないこと…なのですが、その不可能を巧妙な手順により、鮮やかに、さらりと可能にするところが、見事な手腕です。
気鋭の若手、今西氏の鮮烈なる傑作、ぜひご注目くださいませ。
パケットトリックファンの方にお勧めするフレッシュな最新作。
実用的で効果の高い作品ですので、お試しください。
■商品内容・・・特殊パケットセット 一式、演技/解説DVD、解説冊子